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静岡地方裁判所 昭和60年(行ウ)20号 判決 1994年8月04日

静岡県庵蔵郡蒲原町中六五二番地

原告

佐野好一

右訴訟代理人弁護士

杉山繁二郎

静岡県清水市江尻東一丁目五番一号

被告

清水税務署長 安間宏

被告指定代理人

新堀敏彦

鈴木朝夫

時田敏彦

木村勝紀

小田嶋範幸

高柳昌興

主文

一  原告の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告が昭和五八年三月二日付でした原告の昭和五四年分、昭和五五年分及び昭和五六年分の各所得税の各更正及び過少申告加算税賦課決定をいずれも取り消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

主文同旨

第二当事者の主張

一  請求原因

1  原告は、農漁業を営む者であるが、昭和五四年分、昭和五五年分及び昭和五六年分の各所得税につき、所得金額を別表一「本件課税処分の経緯」(以下「別表一」という。)の確定申告欄のとおり記載して確定申告をし、昭和五七年三月一五日、昭和五四年分及び昭和五五年分について、同修正申告欄のとおり修正申告をしたところ、被告は、原告には、同更正及び賦課決定欄記載の分離課税の土地等の雑所得(以下「本件所得」という。)があるとして、原告の右昭和五四年分及び昭和五五年分の修正申告並びに昭和五六年分の確定申告に対し、昭和五八年三月二日、それそれ同表の更正及び賦課決定欄記載のとおり更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分をした。

2  被告は、右各更正処分賦課及び決定処分につき原告が同年四月三〇日にした異議の申立てに対し、同年一〇月二四日、別表一異議決定処分欄のとおり、前記各更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分の一部を取り消す決定をした(以下においては、異議決定を経た後の前記各更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分を「本件各更正処分」、「本件各賦課決定処分」といい、両者を併せて「本件各処分」という。)。

3  さらに、原告は、同年一一月二五日、国税不服審判所長に対して本件各処分につき審査請求をしたが、昭和六〇年九月三〇日、これを棄却する裁決がされた。

4  前記本件所得は、原告ではなく、亡佐野元敬(以下「元敬」という。)及びその相続人である佐野博(以下「博」という。)に属するものであり、これを原告に帰属するものとしてされた本件各処分は違法である。よって、本件各処分の取消しを求める。

二  請求原因に対する認否

請求原因1ないし3の事実は認め、同4の本件所得は、原告ではなく、元敬及びその相続人である博に属する棟の主張は否認する。

三  抗弁(本件各処分の適法性)

1  総論(本件各処分の根拠の概説)

(一) 原告は、転売利益を得ることを目的として、望月儀作名義を使用して、昭和四八年八月三〇日付で、上村正雄(以下「上村」という。)所有の静岡県庵原郡蒲原町地震山下五〇一一番四畑一〇九〇平方メートル及び磯部権吉(以下「磯部」という。)所有の同所同番九畑九〇一平方メートル(いずれも昭和五〇年六月六日分筆前のもの。合計地積一九九一平方メートル。以下、「本件土地」という。)を、前者について代金一三〇五万円で、後者について代金八三七万円で、それぞれ買い受けた。

(二) 原告は、いわゆる中間省略登記の方法での転売を予定して、取得代金を地主に支払った後も、本件土地の登記を経由せず、他方で右方法で転売して売却代金を、手に入れた場合には、右上村・磯部から分譲地の買主に直接譲渡されたものとして、長期譲渡所得としてのより軽い税負担のもとに本件課税関係を処理するとともに、本件譲渡に関っていることを税務当局に察知されることを回避するために、旧地主の所得申告を代行することとした。

(三) 原告は、本件土地を宅地造成をした上、右方法により同土地を別表二「本件土地等の分譲状況一覧表」(以下「分譲一覧表」という。)の1ないし3のとおり分筆譲渡し、同記載の譲渡代金(合計五〇八六万三二八〇円)を得た。これにより、後期2のとおり、本件各係争年分の分離課税の土地等の雑所得金額があったが、原告はこれについて申告をしなかったため、被告は本件各処分に及んだものである。

2  原告の本件係争各年分の各所得金額の算出根拠

(一) 昭和五四年分

(1) 総所得金額 一六〇万七六六六円

内訳

(a) 事業所得金額 一一九万二〇八二円

(b) 給与所得金額 四一万五五八四円

(2) 分離課税の長期譲渡所得金額 四三万四六二〇円

右(1)及び(2)は、いずれも原告が昭和五七年三月一五日に被告に提出した昭和五四年分の所得税の修正申告書に記載されていた金額である。

(3) 分離課税の土地等の雑所得金額 一四三九万三六三九円

内訳

(a) 収入金額 二六九六万三二八〇円

原告は、本件土地を取得後宅地造成をし、うち九二〇・七三平方メートルを分譲一覧表1(ただし、被告主張に係る譲渡金額欄を除く)のとおり皆本正法ほか四名に売却し、譲渡代金二六九六万三二八〇円を得た。

ところで、所得税法は、収入金額の権利確定の時期をもって、その所得に係る帰属年分としている。右各分譲地は、いずれも地目が農地であったから、その売買契約は農地法上の許可ないしは届出を法定条件として効力を生じるものであるところ、右許可ないしは届出により当該売買契約の効力が生じた以上は、特段の事業がない限り、当該売買契約に係る売買代金の権利が確定したものといえるから、その時期をもって所得の帰属年分というべきである。そこで、分譲一覧表1記載の各売買については、農地法上の農地転用許可を受けた日の属する本年分の雑所得の収入としたものである。

(b) 収入原価の額 一一九九万六一九一円

次のアないしウの合計額である。

ア 取得費の額 九九〇万五二一三円

原告は、本件土地の前記のとおり上村及び磯部から代金合計二一四二万円で買い受けた。

そこで、右買受代金合計額を本件土地の合計地積一九九一平方メートルで除して求めた一平方メートル当たりの取得価額は一万〇七五八円であるから、(a)で譲渡した地積(譲渡地積)九二〇・七三平方メートルに対応する取得費は九九〇万五二一三円である。

イ 宅地造成費の額 七六万〇五二三円

原告は、<1>埋土費用として七七万四五〇〇円、<2>地積訂正・測量費用として三〇万円、補強工事費として五七万〇八七五円、合計一六四万五三七五円を本件土地の造成及びこれの関連費として支払った。これを本件土地の地積で除して一平方メートル当たりの宅地造成費を求めると八二六円である(一六四万五三七五円÷一九九一平方メートル)から、これに前記譲渡地積を乗じた七六万〇五二三円が対応する宅地造成費である。

ウ 支払利子の額 一三三万〇四五五円

本件土地を取得するに当たり、原告は、昭和四八年一二月二二日、蒲原町農業協同組合(以下「蒲長原町農協」という。)から、原告の妻佐野まつみ名義で三〇〇万円、同弟佐野鍬太郎名義で四〇〇万円の合計七〇〇万円を借り入れた。

原告は、蒲原町農協に対し、同日から昭和五〇年六月までの間に一三三万五一五六円を、また、同年七月から完済(昭和五四年五月一七日)までの間に一四一万二七〇九円を右借入金に係る利息として支払ったが、原告は、本件土地の一部一六五・九一平方メートルを前記地震山下五〇一一番四七及び四八として昭和五〇年六月に堀久亮に売却している。

そこで、昭和四八年一二月二二日から昭和五〇年六月までの間の一平方メートル当たりの借入金利息は、一三三万六一五六円÷一九一九平方メートル=六七一円、また、同年七月から完済までの間の一平方メートル当たりの借入金利息は、一四一万二七〇九円÷(一九九一平方メートル-一六五・九一平方メートル)=七七四円であるから、本件各係争年分に係る一平方メートル当たりの借入金利息は一四四五円であり、これに前記譲渡地積を乗じて求めた一三三万〇四五五円が対応する支払利子である。

(c) 一般経費の額 五七万三四五〇円

原告は、昭和五四年中に農地転用申請費用及び測量費として三六万八四五〇円、仲介手数料として二〇万五〇〇〇円を支出した

(d) 分離課税の土地等の雑所得金額((a)-(b)-(c)) 一四三九万三六三九円

原告は、本件土地に区画形質の変更等を加えた上、営利を目的として継続的に売却して所得を得たものであるから、右所得は、所得税法三三条二項一号の規定により譲渡所得には該当しないところ、その規模等からして事業と称するに至らない程度のものと認められるので同法三五条一項に規定する雑所得となるものである。そして、右所得は、所有期間一〇年以下の土地の譲渡に係るものであるから、租税特別措置法二八条の四の規定する分離課税の土地等の雑所得に該当する。

(二) 昭和五五年分

(1) 総所得金額 三一万四九八五円

内訳

(a) 事業所得金額(損失の金額) ▲三四万九九八五円

(b) 給与所得金額 六六万四九七〇円

右は、いずれも原告が昭和五七年三月一五日に被告に提出した昭和五五年分の所得税の修正申告書に記載されていた金額である。

(2) 分離課税の土地等の雑所得金額 九五六万三〇九一円

(a) 収入金額 一七〇〇万円

原告が本件土地のうち合計地積五六四・八一平方メートルを分譲一覧表2のとおり望月啓男ほか一名に売却して得た譲渡代金合計額であり、前記(一)(3)(a)と同様、農地転用許可のあった日が属する本年分の収入となるものである。

(b) 収入原価の額 七三五万八九〇九円

次のアないしウの合計額である。

ア 取得費の額 六〇七万六二二六円

前記(一)(3)(b)アのとおり、本件土地の一平方メートル当たりの取得価額一万〇七五八円に、譲渡地積五六四・八一平方メートルを乗じて求めた金額である。

イ 宅地造成費の額 四六万六五三三円

前記(一)(3)(b)イのとおり、本件土地の一平方メートル当たりの宅地造成費八二六円に譲渡地積五六四・八一平方メートルを乗じて求めた金額である。

ウ 支払利子の額 八一万六一五〇円

前記(一)(3)(b)ウのとおり、本件土地の一平方メートル当たりの支払利子の額一四四五円に譲渡地積五六四・八一平方メートルを乗じて求めた金額である。

(c) 一般経費の額 七万八〇〇〇円

原告が昭和五五年に譲渡した土地に係る農地転用費用及び測量費として七万八〇〇〇円を支払った。

(d) 分離課税の土地等の雑所得金額((a)-(b)-(c)) 九五六万三〇九一円

(三) 昭和五六年分

(1) 総所得金額 四八三万七四九四円

内訳

(a) 事業所得金額 三八六万四二八七円

(b) 給与所得金額 六八万五七〇七円

(c) 一時所得金額 二八万七五〇〇円

右は、いずれも原告が昭和五七年三月一五日に被告に提出した昭和五六年分の所得税の確定申告書に記載されていた金額である。

(2) 分離課税の土地等の雑所得金額 三七九万六六九三円

(a) 収入金額 六九〇万円

原告が本件土地のうち合計地積二二九・五五平方メートルを分譲一覧表3のとおり栗山勝昭に売却して得た譲渡代金額である。右分譲地については、分譲一覧表3記載の売買契約締結及び所有権移転登記が農地転用許可を受けた後になされたものであるから、本年分の収入となるべきものである。

(b) 収入原価の額 二九九万〇八〇七円

次のアないしウの合計額である。

ア 取得費の額 二四六万九四九九円

前記(一)(3)(b)アのとおり、本件土地の一平方メートル当たりの取得価額一万〇七五八円に、譲渡地積二二九・五五平方メートルを乗じて求めた金額である。

イ 宅地造成費の額 一八万九六〇八円

前記(一)(3)(b)イのとおり、本件土地の一平方メートル当たりの宅地造成費八二六円に譲渡地積二二九・五五平方メートルを乗じて求めた金額である。

ウ 支払利子の額 三三万一七〇〇円

前記(一)(3)(b)ウのとおり、本件土地の一平方メートル当たりの支払利子の額一四四五円に譲渡地積二二九・五五平方メートルを乗じて求めた金額である。

(c) 一般経費の額 一一万二五〇〇円

原告が昭和五六年に譲渡した土地に係る農地転用費用及び測量費として三万七五〇〇円並びに印紙代などの雑費として七万五〇〇〇円を支払ったその合計額。

(d) 分離課税の土地等の雑所得金額((a)-(b)-(c)) 三七九万六六九三円

3  本件各更正処分の適法性

被告が本訴において主張する原告の本件係争各年分の分離課税の土地等の雑所得金額は、

昭和五四年分 一四三九万三六三九円

昭和五五年分 九五六万三〇九一円

昭和五六年分 三七九万六六九三円

であるところ、被告が本件各更正処分において認定した右雑所得金額は、

昭和五四年分 一一七七万四八六七円

昭和五五年分 八七三万八五五一円

昭和五六年分 二七一万九九四〇円

であって、いずれも右被告主張額の範囲内であり、また、その余の所得金額は、被告認定額と原告の申告額とがいすれも同一であるから、本件各更正処分はいずれも適法である。

4  本件各賦課決定処分の根拠及び適法性について

被告は、国税通則法(昭和五九年法律第五号による改正前のもの、以下同じ。)六五条一項の規定に基づき、本件各更正処分によって増加した原告が納付すべき所得税額(同法一一八条三項の規定により一〇〇〇円未満を切り捨てた金額)

昭和五四年分 四六八万八〇〇〇円

昭和五五年分 三一九万円

昭和五六年分 一〇八万七〇〇〇円

につき、それぞれ一〇〇分の五の割合を乗じて算出した過少申告加算税(同法一一九条四項の規定により一〇〇円未満を切り捨て)

昭和五四年分 二三万四四〇〇円

昭和五五年分 一五万九五〇〇円

昭和五六年分 五万四三〇〇円

をそれぞれ賦課決定したものであり、原告が所得金額を過少に申告したことについて同法六五条二項に規定する正当な理由があったとは認められないので、本件各賦課決定はいずれも適法である。

四  抗弁に対する原告の認否及び反論

1  抗弁1項について

同項記載の事実のうち、本件土地の元の所有者が地震山下五〇一一番四につき上村、同所同番九につき磯部であったこと、本件土地が宅地造成された後、分譲一覧表1ないし同3記載のとおり譲渡されたこと(ただし、同表1記載分については、譲渡価額については原告主張欄の額である)、右譲渡が中間省略登記の方法により行われたこと、右譲渡にかかる上村及び磯部の名義での所得税等の申告がされたことの各事実については認め、その余は否認する。

(一) 望月儀作名義を用いて本件土地及びこれに隣接する石原安太郎(以下「石原」という。)所有の地震山下四九九九番一九の土地(一四三七平方メートル。ただし、分筆前のもの。以下「本件隣接地」といい、本件土地と併せて「本件土地等」という。)を取得したのは、原告ではなく、元敬である。

(1) その取得費用の額は、土地代金合計四六六二万八五〇〇円である。

内訳

上村に対する支払代金一六三一万円

磯部に対する支払代金一一二八万円

石原に対する支払代金一九〇三万八五〇〇円

(2) 元敬が本件土地等を取得した経緯は次のとおりである。

原告は、昭和四七年ころ、右上村、磯部、石原の三名(以下「旧地主」ともいう。)から本件土地の買い手を探してほしい旨を依頼されていた。原告は、従兄弟である元敬が山林をゴルフ場用地として売却して多額の利益を得ていたことから、昭和四八年一月ころ、元敬に本件土地等の購入の意思の有無を打診した。折りから、川崎製鉄が静岡県における製品配送センター用地を探していたことから、元敬は、本件土地等を川崎製鉄に転売するために本件土地等を購入することにし、昭和四八年八月三〇日、右三名の旧地主と本件土地等の売買契約を締結した。その際、元敬が従業員の地位にあった大望興産こと望月儀作の名義を借用することにした。また、右各売買契約においては、旧地主三名の本件土地等に関する所得税、市町村民税及び国民健康保険税を元敬が支払う旨の特約が付されていた。

(3) 原告は、元敬を右旧地主三名に紹介した際、右旧地主らから面識がなく遠方に住む元敬との間での金銭のやり取りにつき不安を訴えられ、原告が責任を持って取り持つように請われていたため、前記(1)の代金の支払は元敬から原告を介して行われた。

(二) 元敬は、本件土地等を取得後、昭和四八年九月ころ測量を、また昭和四九年一月から三月ころにかけて土地造成をそれぞれ行った。その費用は、合計五一四万〇七六〇円であった。

(三) 元敬は、前記のとおり本件土地等を川崎製鉄に転売するつもりでいたが、本件措置等は、東海金属株式会社の蒲原工場の門前に所在していたため、同社が購入を強く希望し、元敬は同社に転売することにした。

しかし、結局同社の資金繰りがつかず、元敬はやむなく本件土地等を分譲して処分することとした。

(四) 他方、原告は、元敬に対して後記のように貸付金債権を有していた。

元敬は昭和五〇年六月一日当時、糖尿病により自己の余命が幾ばくもないことを知っており、前記(三)のように行き詰まった本件土地等の問題の処理を原告に委ね、その中から右貸付金の回収を得させる趣旨から、原告に対し、本件土地等の分譲につき代理権を授与した(なお、元敬は同年一〇月一九日に死亡した。)。貸付金の内容は次のとおりである。

(1) 原告は、元敬に対し、本件土地等の取得費用の一部の支払資金とするために、昭和四八年一二月二八日、金一〇〇〇万円を貸し渡した。

(2) 原告は、元敬に対し、本件土地等の造成費用として、昭和五〇年六月一日ころまでに合計一七六万九二六〇円を貸し渡した。

(3) 昭和四五年ころ、元敬が杉山功と共同で建坪約一〇五〇坪に及ぶ貸し倉庫を建築するに当たり、元敬の求めに応じて、原告及び原告の実弟佐野鍬太郎は、それぞれ一一〇〇万円及び四〇〇万円を返済期を定めず元敬に貸し渡した。その後、鍬太郎の貸付分については、同人が田を購入する資金が必要となったため、原告において昭和四八年二月二〇日金二三〇万円、同年四月一七日金一七〇万円をそれぞれ代位弁済し、結局、原告は元敬に対して一五〇〇万円の債権を有するに至った。

(五) また、本件土地等の登記名義は依然前記三名の旧地主に残っていたから、後に問題を起こさないために、原告は、右三名の旧地主からも本件土地売買の代理権の授与を受けた。

(六) 原告は、前記(四)の代理権に基づき、分譲一覧表1ないし3並びに同4の番号1及び2に記載のとおり本件土地等の大部分を売却した(譲渡価額合計七三四〇万八五六〇円)。売却の方法は、所有名義が残っていた前記三名の旧地主から直接買主に売るという形式がとられ、所有権移転登記も中間省略によりなされた。

原告は、買主から右譲渡代金を受領したが、前記(一)の特約に基づき前記旧地主三名の本件土地に関する所得税、市町村民税及び国民健康保険税合計一六二八万一五四〇円を別表三「所得税等の支払」記載のとおり支払い、また、自らの前記(四)の各貸付金の元本及び若干の利息の弁済に充当し、残金を元敬の相続人である博に渡した。

以上によれば、原告には本件土地等に関して分離課税の土地等の雑所得はない。

2  抗弁2項について(同項(一)ないし(三)に共通)

(一) 原告の昭和五四年分ないし昭和五六年分の原告の総所得金額、その内訳としての事業所得金額及び給与所得金額並びに昭和五四年分の分離課税の長期譲渡所得金額については、いずれも認める。

(二) 分離課税の土地等の雑所得金額については、すべて否認する。

3  抗弁3項及び4項は争う。

第三証拠

本件訴訟記録中の書証目録及び証人等目録の記載を引用する。

理由

一  請求原因1ないし3の事実(本件処分の経過)については、当事者間に争いがない。

二  抗弁(本件処分の適法性)について検討する。

1  本件土地の元の所有者が地震山下五〇一一番四につき上村、同所同番九につき磯部であったこと、本件土地が宅地造成された後、分譲一覧表1ないし同3記載のとおり譲渡されたこと(ただし、同表1記載分については、番号1、3、5に記載の取引にかかる譲渡代金額につき争いがある。)、右譲渡が中間省略登記の方法により行われたこと、右譲渡にかかる上村及び磯部の名義での所得税等の申告がされたこと、しかしながら、本件土地の譲渡に関する所得が右上村及び磯部に帰属するものではなく、これが原告に帰属するのか、元敬に帰属するかが争われているものであること、本件隣接地(地震山下四九九九番一九)の土地の所有者が石原であったことについては当事者間に争いがない。

2  本件土地代金の流れ

(以下、事実認定に用いる証拠の摘示につき、書証の成立に関する判断は、当該書証の成立の真否が実質的に争われているものと解される場合のほかは、記載を省略することとする。)

(一)  旧地主らへの代金支払状況

甲第一号証の一、甲第二号証の一、甲第三号証の一、乙第二号証、第三号証、第三七号証の二、第七二号証ないし第七六号証及び弁論の全趣旨によれば次の事実が認められる。

(1) 旧地主等から望月儀作名義を用いた買主との間の売買契約において、代金額及びその支払方法は次のように定められていた(括弧内が履行期)。

(a) 上村分

売買代金額 一三〇五万円

手付金(契約時) 四三五万円

中間金(昭和四八年一〇月一〇日) 四三五万円

残金(同年一二月三〇日)

特約 土地に課する所得税、市町村民税、国民健康保険税は買主負担、税金保留金一四五万円地主負担

(b) 磯部分

売買代金額 八三七万円

手付金(契約時) 二七九万円

中間金(昭和四八年一〇月一〇日) 二七九万円

残金(同年一二月三〇日)

特約 土地に課する所得税、市町村民税、国民健康保険税は買主負担、税金保留金九三万円地主負担

(c) 石原分

売買代金額 一七四一万五〇〇〇円

手付金(契約時) 五八〇万五〇〇〇円

中間金(昭和四八年一〇月一〇日) 五八〇万五〇〇〇円

残金(同年一二月三〇日)

特約 土地に課する所得税、市町村民税、国民健康保険税は買主負担、税金保留金一八八万円地主負担

(2) 右代金については、それぞれの弁済期までに原告が各地主に対して支払った(ただし、残金については税金補修金分を除いた額)。

(3) 右代金支払中、蒲原町農協の口座を介して行われた分につき次の事実がある。

(a) 昭和四八年八月二七日に蒲原町農協に「上村正雄外二名」名義の預金口座(口座番号一一五二)が新規開設され、同日一二九四万五〇〇〇円が入金された。このうち、九四万五〇〇〇円は、原告の同農協の口座(口座番号四五五)から出金されたものである。

右上村正雄外二名名義の口座からは、同月三一日に一二九四万五〇〇〇円が出金され、いずれも本件土地代金を受け入れるために同日開設された磯部(口座番号一一五六)、上村(同一一五七)及び石原(同一一五五)名義の各口座にそれぞれ順に二七九万円、四三五万円、五八〇万五〇〇〇円が入金された。

これは、旧地主に対する土地代金中、手付の支払いに対応するものである。

(b) 昭和四八年一〇月九日、右上村名義の口座(口座番号一一五七)に二九四万五〇〇〇円が入金されているが、これは原告の前記口座から出金され、直接振り替えられたものである。これは、中間金の支払いの一部に対応する。

(c) 原告は、昭和四八年一二月二二日に妻佐野まつみ及び実弟佐野鍬太郎名義で合計七〇〇万円を蒲原町農協から借り入れ、右金員は原告の前記口座に入金された。

同日、同金額が原告口座から引き出され、他方、旧地主である磯部の口座に一九五万三〇〇〇円、上村の口座に九八万三五〇〇円、石原の口座に四〇六万三五〇〇円の合計七〇〇万円が入金となった。これも、原告の右口座から直接振り替えられたものであり、売買代金中残金の支払に対応する。

(d) 右(a)ないし(c)の原告口座から振替えにより支払が行われた分(合計一〇八九万円)について、その原資につき元敬名義の口座との関連を窺わせる証拠は本件記録中に存しない。また、その余の「上村正雄外二名」名義の口座に入金された金員については、原告本人尋問の結果中に、元敬が準備した金員である旨の部分が存するが、これを裏付ける証拠はなく、かつ、証人佐野博の証言及び弁論の全趣旨により認められる、元敬が本件土地等の取引について、自己の名を秘匿しなければならない事情は何ら存しなかったことに照らすと、直ちに措信し難い。

(e) 右(c)及び(d)によれば、原告は、旧地主に対する本件土地等の代金支払資金の調達方の手配を自らの計算でしていたことが認められる。

(二)  分譲地の買主からの入金状況

(1) 譲渡価額の認定

前記のとおり分譲一覧表1記載の売買中番号2及び4並びに同表2及び同3各記載の売買については、譲渡価額に争いはないところ、乙第二四号証の一及び二によれば、同表の番号1の皆本正法に対する譲渡価額は三九三万七五〇〇円であり、また、乙第八号証によれば、同番号5の高地淳・孝実に対する譲渡価額は七三四万六七八〇円であることがそれそれ認められる。

また、同番号3の木内定治に対する譲渡価額は、乙第二六号証の一及び二によれば、契約書上の金額は一平方メートル当たり二万六三七〇円であり、合計五〇八万八〇〇〇円余となるはずであるが、乙第五〇号証ないし第五二号証によれば、同人から原告宛に昭和五四年二月二三日に二〇〇万円、同年六月一日に四五〇万円が支払われていることが認められるところ、乙第三三号証によれば、木内から原告に対して右分譲地の土地代金のほかに金銭の授受を行うべき特段の事情は存しなかったことが推認されるから、右現に支払われた金員の合計額である六五〇万円が譲渡価額であると認められる。

以上によれば、分譲一覧表1ないし3記載分の本件土地の分譲に関する譲渡価額の合計は、五〇八六万三二八〇円である。

(2) 原告主張においても、元敬ないしはその相続人たる博の代理人としてであるとの留保をつけながらも、原告は譲渡代金の全額を買主から受領したというのであるから、原告が右譲渡代金の全額を受領したこと自体は弁論の全趣旨により認められるところ、これに加えて、乙第三四号証、第五三号証の一ないし三、第七一号証及び第七七号証を総合すれば、分譲一覧表1の番号5及び同表2の番号2の譲渡に係る代金の入金については、次の事実が認められる。

(a) 高地淳・孝実からの入金について

高地淳・孝実からは、前記原告口座に昭和五四年六月四日に五三〇万円が入金されたが、その入金の経緯は次のとおりである。

同日、同人らは、蒲原町農協から八五〇万円(手取額八四二万一四〇〇円)を借り入れたが、これは、同農協に「貸付留保金」として計上され、現実に高地らに支払われることなく、同日、右留保金の中から五三〇万円が原告名義の貯金口座(口座番号四七三)に振替入金された。この処理により、原告の貯金元帳には、「54-06-04カシツケ5,300,000」とあたかも原告自身が同農協から五三〇万円を借り入れたかのような記帳が行われ、本件土地代金との関連が記帳上一見しては明らかとならない体裁となっているが、証人細野光生の証言によれば、本件土地等が旧地主から売却された当時、原告は、同農協の理事の地位にあった者であり、また、乙第九号証によれば、原告は、同農協に対し、虚偽の貸付残高証明書を作成させているのであって、その同農協に対する影響力を考慮すると、右のような会計処理も原告の指示によるものと推認される。

(b) 海野晃からの入金について

海野晃からは、<1>昭和五四年一二月一二日、三〇〇万円、<2>同月二五日、四五〇万円、<3>同月二八日、一〇〇万円がそれぞれ原告名義の普通預金口座に入金されている。

同人は、右支払資金の調達方として蒲原町農協から借り入れようとしたが、同農協の組合員ではなく、同人の名義で同農協から借り入れをすることはできなかったため、同農協の組合員であった原告の長男佐野快一名義で同月二五日に五七五万円の借り入れ(手取額五七〇万三八五〇円)が行われ、同日右快一名義の口座に入金された後、同額が出金され、右海野の口座に入金された。同人は、同日五七〇万三八五〇円を右口座から引き出し、同日中に原告にその一部四五〇万円を手渡し、原告は、同日これを自己名義の口座に入金した。また、海野は、一二月二八日に一〇〇万円を原告の口座に振り込み入金した。

右佐野快一名義に係る借入金の返済は、海野が同人の口座から振替処理することにより行われていた。

これによれば、原告が分譲地の買主の資金の調達方の手当にも関与していたことが推認される。

(三)  本件土地の造成工事の施工

原告は、本人尋問において、本件土地等の造成工事代金一七六万九二六〇円を(元敬に)に立て替えて支払ってやり、これを元敬に対する貸金に切り替えて甲第一〇号証の借用書を作成した旨供述していること、乙第三五号証によれば、原告の本件各更正処分に関する異議申立の処理のための税務調査を担当した税務署職員が原告から事情聴取したところ、原告はメモを見ながら、同職員に対し、本件土地等の造成費用として埋土費用、地積訂正・測量費用、補強工事の費用等を支払った旨を話したこと、同職員が造成工事について業者に対して反面調査をしたところ、原告から依頼を受けて造成工事をしたことが確認できたことが認められ、これらによれば、本件土地等の造成工事を業者に発注し、代金等の支払いをしたのも、原告であると認められる。

(四)  譲渡代金の使途に関する原告の供述

前記原告が受領した本件土地の譲渡代金の使途については、証拠上必ずしも詳らかではないが、乙第二七号証、第二九号証の各一、二及び原告本人尋問の結果を総合すれば、それが別表三「所得税等の支払」記載の額と一致するかは定かではないものの、旧地主名義の本件土地譲渡に係る所得税、市町村民税及び国民健康保険税の納税をしていたことは認められる。さらに、原告は、右納税分のほかに、自己所有の漁船のエンジンの取替費用として約五五〇万円を、次男のギャンブルによる借財の弁済及び蒲原町農協からの借入金の弁済としてそれぞれ一千何百万円かを支出したため、本件土地の譲渡代金はすべて費消し、むしろ赤字であると供述するが、右支出に際して、その原資である譲渡代金が特に第三者に帰属することを前提とした取り扱いをしていたことを窺わせる供述はしていない。この点、原告は、本件土地の分譲等については、元敬に対する貸付金の回収のため、同人の委任を受けてその代理人として行ったものであり、自ら受領した代金は、同人に対する右貸付金の弁済に充当した旨主張し、右自己の用途による費消分が弁済充当分に相当するとする趣旨のようであるが、右貸付金の存在及び代理権の授与の主張が採用できないことは後に判示するとおりである。また、仮に原告の右支出に関する供述のとおりの支出がされたとしても、原告は、前記のとおり旧地主等へ支払うべき売買代金のうち合計四二六万円及び後記認定のとおり笠間運送への売買代金のうち五〇〇万円を税金保留金として手許に留保し、これを右納税の資金の一部に充てていたのであるから、後に認定の造成費用、支払利息などの諸経費の支払いを考慮に入れても、赤字である旨の右供述は措信し難く、かえって、右原告の支出に関する供述を前提としても、右入金された譲渡代金に照らせば、なお少なからぬ剰余金が存する計算となるのであり、これについては、原告が自らの手許に保持し、あるいは、費消したものと推認することができる。

そうすると、原告は本件譲渡により受領した代金につき、旧地主名義の所得税等の支払いをした残余については、自己の用途に費消するなど、自己に帰属するのでなければとりえないような態度をとってきたものというべきである。

3  関係者の認識

(一)  旧地主側

(1) 前記磯部は、乙第二二号証において、前記地震山下五〇一一番九の土地は、昭和四九年ころ、原告に売却した旨述べている。

(2) これに対し、前記上村は、乙第三号証において、「買主の名義人である望月儀作も大望興産も知らない。本件土地の代金については、原告から受け取っているが、石原からは、原告、元敬、望月策常が三人で出資して代金を支払っていると聞いている。」と述べ、右石原は、当初は買主が誰かは明らかではなかったが、昭和五〇年ころ、地震山下四九九九番一九の土地の約半分を取得した望月策常から、原告が二五〇〇万円、元敬が一五〇〇万円、望月策常が一〇〇〇万円それぞれ出資して取得したと聞いた旨述べ、同人に対する証人尋問においても、これと異なる供述はしていない。

(3) 右(2)の点について、望月策常は、乙第四号証において、「自分は現在(聴取時昭和六一年八月二八日)地震山下四九九九番三四の土地を所有しているが、この土地を取得する経緯は、元敬から一〇〇〇万円の借金を申し込まれ、貸し付けたが、その返済ができないため、(本件土地等取得の)仲間に入れと誘われたが、そのうちに元敬が死亡したので、右の話は進展せずに終わった。そこで、相続人の博に一〇〇〇万円の返済を求めたが、同人は事情を知らないため、原告に相談したところ、一方的に一〇〇〇万円の弁済に代えて前記四九九九番三四の土地を自分に押し付けてきた。分譲についても、出資金に応じた清算についてもまったく聴いていない。自分がもらった土地は道路もなく、一番奥で、その隣が博の土地となっている。一番いいところを原告が自分の物として分譲している。」旨述べている。

(二)  分譲地の買主側

他方、本件土地からの分譲地の売買契約について、原告は契約書上、立会人として署名押印をしていることが認められる(乙第二四号証ないし第二六号証の各一及び二、第二八号証の一ないし三、第三〇号証、第三一号証の一及び二)ところ、買主においては、「契約に当たって話をしたのは、原告である。聞くところによると、地主から買って分譲しているということであった。」(高地淳・乙第八号証)、「土地を買うことについて、すべて原告と話し合いをしたので、原告から買ったものと思っていた。代金も原告に対して支払った。」(木内定治・乙第三三号証)、「(土地売買の)話を持ってきたのは原告で、原告は事情の得意先であり、坪一〇万円と相場に比べて割安であったので話がまとまった。契約書の作成等はすべて原告に任せていた。元敬のことは知らない。」(海野晃・乙第三四号証)と述べているなど、原告を当事者として認識していたものであり、旧地主からの直接の取得であったり、元敬ないしはその相続人が当事者として関与しているという趣旨のことについて述べている者はいない。

4  元敬の死亡・相続における本件土地等の扱い

甲第一四号証の一、二、第一五号証の一ないし三、乙第一号証、第三九号証、四〇号証、第六〇号証及び証人佐野博の証言に弁論の全趣旨を総合すれば、次の各事実が認められ、これを覆すに足りる証拠はない。

(一)  本件土地等につき、博は、元敬の生前に元敬に案内されて見に行ったことがあること、しかし、その境界や既に買った土地としてなのか、これから買う土地なのかについてははっきりしなかったこと

(二)  元敬は昭和五〇年一〇月一九日に死亡したが、その前に遺産の内容や分割方法については事細かく博をはじめとする子らに指示していたこと、しかし、本件土地については博は元敬から特段帰化されていないこと、そのため、元敬の相続人である博において、これを相続財産に含まれるとは認識していなかったこと、相続税の申告に当たっても、相続財産に含まれるものとして申告されてはいなかったこと

(三)  その後、前記3(一)(3)のとおり、望月策常から元敬に対して本件土地等に関して一〇〇〇万円の貸付金がある旨の請求を受けたが、博はこのことについても元敬から何らの説明もを受けておらず、むしろ「借金はない」と聞かされていたこと、そこで原告に相談の上、前記代物弁済をすることになったこと

(四)  本件土地等のうち、分譲一覧表4の番号2記載のとおり、地震山下四九九九番一九の土地のうち、分筆後の六六二平方メートルは、昭和五五年に笹間運送有限会社に譲渡されているが、その契約等もすべて原告が行ったこと、代金約二四〇〇万円のうち、税金留保金として五〇〇万円を原告が留保し、博は約一九〇〇万円を原告から受け取ったが、右土地が元敬の相続財産であることはそれにより知ったこと

(五)  さらに、本件土地のうち分譲されずに残った五〇一一番四及び同番九の土地(合計地積一一〇平方メートル)については、昭和四八年八月三〇日売買を原因として旧地主から博名義への所有権移転登記がされているが、それに至ったのは、博が、旧地主である上村及び磯部の相続人に対し、本訴提起後である昭和六一年及び翌六二年になって、そのころ、原告から右各土地が元敬の相続財産であるといわれ、本訴原告訴訟代理人を訴訟代理人として右各所有権移転登記手続を求める訴えを提起したが、同訴訟で和解が成立したことによるものであること、また、地震山下四九九九番三六の土地も、時期等は不明であるが、博名義に所有権移転登記が経由されていること

5  以上1ないし4に認定した事実を総合すれば、本件土地の取得及び分譲は、専ら原告の計算において、原告がすべての事務処理ないし財産的処分を専行する形で行われていたものであり、その収入についても原告が自己のために費消していることが認められるから、特段の事情がない限り、その所得は原告に帰属するものと推認することができる。

6  ところで、本件土地だけでなく隣接地(分筆前の四九九九番一九)の取得・分譲についても眼を向ければ、望月策常からの聴取書(乙第四号証)や石原の供述などにおいては、元敬も共同出資者であることがうかがわれ、現に分筆後の四九九九番一九の土地の笹間運送有限会社に対する譲渡代金は、元敬の相続人である博に帰属していること、望月策常に対する四九九九番三四の土地の所有権移転についても、同人が元敬に対して有していた一〇〇〇万円の債権の代物弁済によるものであること、さらに、四九九九番三六の土地については、博に帰属していること等、これを裏付ける客観的事実もないではなく、本件の異議申立及び審査請求時においては、被告も、元敬が共同出資者であるとの前提に立っていた。

しかしながら、本件係争は、専ら本件土地の分譲をめぐる所得の帰属の問題であるところ、この分譲代金の取得及び経費の支出並びに造成工事の施行については、前記のように原告が専行していたもので、これについて元敬ないしその相続人たる博の計算が介在したり、事後の清算関係が存在したことを窺わせる証拠は存しない。

また、本件土地のうち、博名義に所有権移転登記がされた五〇一一番四及び同番九の土地の部分についてみても、前記4(五)に認定の同登記手続に至る経緯に、前記争いのない事実及び乙第四九号証を総合すると、原告において本件土地の分譲を旧地主からの中間省略登記の方法により難無く処理することができたのに、その原告の協力を得ている博が、訴訟という手段によらなけはれ旧地主からの所有権移転登記を受けられないというのは、いかにも不自然であり(しかも、右和解は、提訴後比較的早い時期に原告博の請求をほぼ認める内容で成立しており、旧地主との間には実質的な争いはなかったものと推認される。)、元敬こそ本件土地等の取得者であるとする原告の主張に照らせば、その感はますます強いものとなること、博による右訴訟の提起が、本訴提起後であり、元敬の死後一〇年以上、博が前記笹間運送への売却代金を受領したときからも六年を経過した時期に、原告の強い影響力の下に行われているものであること、右土地部分の位置は、本件土地中、前記隣接地に接する部分であり、その合計地積は一一〇平方メートルに過ぎないことがそれぞれ認められる。これによれば、右土地部分につき、原告が本件土地の取得及び分譲当時において元敬ないし博の所有に帰属するとの意思を有していたとは認め難く、かえって、右諸事情を総合すれば、右土地部分に関する訴訟及び博への所有権移転登記は、原告が本件各更正処分がされるに及んで、元敬の相続財産として博に帰属しているとの外形を作出するために行わせたものと推認することができる。

してみると、分筆前の四九九九番一九の土地についてはともかく、本件土地については、元敬の共同出資に係る共有持分ないし所有部分が存するとの疑いは容れる余地がないと認められ、前記5の認定を左右するものではない。

7  原告は、元敬に対する貸付金の回収のため、同人から代理権の授与を受け、本件土地の分譲において相手方と折衝をしたり代金の授受をしたものであり、本件所得は元敬ないしその相続人の博に帰属する旨主張し、元敬作成名義の金銭借用書(甲第七号証ないし第一〇号証)や、本件土地についての処分を委ねられていたことの証拠としての「宣言」と題する書面(甲第四号証)、証明書(甲第一二号証)、さらに元敬を宛て名とした旧地主からの土地代金の領収書(甲第三号証の三及び四)、望月儀作名義を借用したのが元敬である旨の望月和子作成の証明書(甲第一一号証)を提出する。

(一)  しかし、右甲第七号証ないし第一〇号証及び甲第四号証については、その元敬名下の印影は、いずれも同一のものと認められるところ、その成立について、原告は、字は元敬の自筆ではないが、印影はいずれも元敬の印によるものである旨を主張し、原告本人尋問の結果にもこれに符合する供述部分がある。しかしながら、以下の括弧内の各書証の存在、証人佐野鍬太郎の証言及び弁論の全趣旨を総合すれば、右印影は、原告の昭和四九年分、昭和五〇年分及び昭和六二年分の所得税の確定申告書(乙第一〇号証ないし第一三号証)のみならず、原告の長男である前記佐野快一の昭和五五年分の所得税の確定申告書(乙第一四号証)や原告の実弟である佐野鍬太郎の平成元年分の所得税の確定申告書(乙第一五号証ないし第一七号証)の各作成名義人名下の印影と同一であると認められる。元敬が死亡したのは前記のとおり昭和五〇年一〇月一九日であるところ、右原告らの確定申告書は元敬の死亡の前後を通じて作成・提出されているものであり、右甲第七号証ないし第一〇号証及び甲第四号証の元敬名下の印影が元敬の印によるものであるとの原告の供述はにわかに措信することはできず、これらの書証が元敬の意思により真正に成立したものと認めることはできない。

(二)  次に、甲第一二号証は、その記載及び原告本人尋問の結果によれば、元敬が、死亡する前日である昭和五〇年一〇月一八日一七時に、妻子、兄弟らの前で、土地売却の代理権及び相続の件に原告に一任する旨述べ、死の一時間前にも同様のことをくり返し述べたということを、娘婿である矢畑進が証明する趣旨の文書であるというのである。しかし、その文書自体、立会人として記載のある元敬の妻子、兄弟等はいずれも署名押印していないという極めて不自然な形式である上、証言佐野博の証言により窺われる元敬の当時の状況等に照らしても到底信用することはできない。

(三)  また、右甲第三号証の三及び四については、証人磯部まつは、磯部の署名は娘の磯部安枝が書き、名下の印影は、磯部の実印である旨証言する。しかし、「佐野元敬様」なる宛て名は、旧地主が作成した領収書(甲第一号証の二及び三、第二号証の二及び三、第三号証の二ないし四)中、右二枚のみに見られるところ、磯部自身は、乙第二二号証(昭和五七年二月二日付同人作成の申立書・ただし署名以外は磯部三枝子が代筆)において、原告に土地を売却した旨述べ、かつ、手付金として契約時に受領した二七九万円については、契約上の買主である望月儀作宛を作成していること、前記のとおり、その他の旧地主も買主が誰かは当初は解らなかったとして、元敬が買主であるとの認識は有していなかったこと等の事情を勘案すれば、右二通の領収書が元敬を宛て名として領収書を作成することは極めて不自然であり、これらは、後日宛て名を変更して作成し直された疑いが強く、これをもって、本件土地の取得者が元敬であることを裏付けるものとは到底いい難い。

(四)  さらに、望月和子作成名義の証明書(甲第一一号証)については、同人に対する大蔵事務官による聴取書(乙第五五号証)によれば、証明書の作成を求めてきた者の言うがままに、下書きを見ながら書いたというもので、事実を書いたものではないというのであり、ましてや、右作成依頼者は、望月和子から右証明書を受け取るや「これで裁判も勝った。」と喜んでいたというのであり、本件係争を原告に有利に進めるために作出された証拠である疑いが強く、信用することはできない。

(五)  これら真正な成立が認められず、あるいは、信用することができない書証を除くと、専ら原告の右主張を支える証拠としては、これに沿う原告本人尋問の結果のほか、証人佐野鍬太郎及び同細野光生(貸付金について)、同磯部まつ、同望月タカジ(代理権の授与について)の各証言が存する。しかし、これらの証言はいずれも曖昧であり、また、客観的証拠関係と矛盾する部分がある上、右磯部証言は、枢要部分は自らの経験に基づくものではなく、原告からの伝聞に依拠するものであって、直ちに信用し難い。また、原告本人尋問の結果は、本件土地等を取得したのが元敬であり、同人の委任を前提として本件土地等の分譲等の処分をし、貸付金の回収に充てたということを前提とするのであれば、委任関係に基づく事務処理の報告及び貸付金への充当や剰余金の清算が行われてしかるべきであるのに、本件土地部分についてはこのようなことが行われたことを窺わせる証拠はない。のみならず、受領した売買代金の使途についての原告の供述も前記2(四)のとおり、甚だ曖昧であるなど、それ自体に不自然・不合理な点が多く、加えて、前記認定の本件土地取得・分譲に関る金の流れ、関係者の認識、元敬の相続財産の処理の経緯等の事実関係とも整合しないのであり、たやすく措信することはできない。

以上によれば、原告の右主張に係る代理権の授与があったことを認めるに足りる証拠はないというほかなく、その他、前記の本件所得が原告に帰属するとの推認が揺るがして、これが元敬に帰属するとの疑いを入れる事情は認められない。

三  所得の算定根拠等について

二に認定した事実によれば、原告は、本件土地に区画形質の変更等を加えた上、営利を目的として継続的に売却して係争各年分にわたり本件所得を得たものであるから、本件所得は、所得税法三三条二項一号の規定により譲渡所得には該当しないところ、その規模等からして事業と称するに至らない程度のものと認められるので、同法三五条一項の定める雑所得に該当するというべきである。そして、右所得は、いずれも所有期間一〇年以下(昭和四八年八月三〇日取得、最後に行われた分譲一覧表3記載の譲渡は昭和五六年二月)の土地の譲渡に係るものであるから、租税特別措置法二八条の四の規定する分離課税の土地等の雑所得に該当すると解される。

1  収入

本件土地の係争各年分に属する収入は、分譲一覧表1ないし3のとおり(ただし、同表1については「譲渡価額(原告主張)」の欄の記載を除く。)である。

2  費用・経費

(一)  本件土地の取得費

(1) 取得代金

(a) 上村分について 一三〇五万円

前記二2(一)及び(二)のとおり、原告が本件土地の取得に際して上村と締結した売買契約の代金額は、一三〇五万円であるところ、原告は、同人に対して合計一六三一万円を支払っている旨主張する。

しかしながら、右支払いについて領収書(甲第二号証の二及び三)及び預金口座への入金(前記二2(一)(3))並びに同人の聴取書(乙第三号証)等の証拠により、現に授受されたものと認められるのは、右契約代金額から約定の税金留保金一四五万円を控除した金額の部分についてであり、右控除された税金留保金の部分については、後記のとおり本来上村が負担すべき所得税等の一部を構成するものとして、原告が上村名義で申告・納付した分譲地の譲渡益に係る所得税等に包含されているものと解される。

したがって、上村からの土地の取得費としては、契約額の一三〇五万円を超えては存しないと認めるのが相当であり、これに反する証拠はない。

(b) 磯部について 一〇二五万七〇〇〇円

前記二2(一)のとおり、原告が本件土地の取得に際して磯部と締結した売買契約の代金額は、八三七万円であるところ、原告は、同人に対して合計一一二八万円を支払っている旨主張する。

甲第三号証の三の領収書によれば、五〇一一番九の土地につき実測により三四坪のいわゆる縄延びがあったため、坪単価五万五〇〇〇円の清算金合計一八八万七〇〇〇円を磯部が受領した事実が認められるところ、同人は乙第二二号証において被告に対し、売却代金は一〇九二万円位であった旨申述していること、証人石原安太郎の証言及び甲第一号証の三によれば、同人も原告から四九九九番一九の土地の縄延び分として、特に請求したわけではないが三三六万五〇〇〇円の支払いを受けていることが認められる。そうすると、右五〇一一番九の土地について、同土地が実測九〇一平方メートル(二七三坪)あるのに、契約地積が六畝六歩(約六一四平方メートル・一八六坪)にくらべて八六坪の増加があるところ、右清算は三四坪の増加分に止まること、契約時の坪単価は四万五〇〇〇円であり、この単価は上村との契約においても同様であるのに、右清算においては坪単価が五万五〇〇〇円とされていること等の事情を考慮しても、甲第三号証の三の領収書に記載されている一八八万七〇〇〇円の金員は、実測清算分として、磯部に支払われたものと認めるのが相当である。

以上によれば、磯部に対し、五〇一一番九の土地の取得代金額としては、前記契約代金額(税金留保金九三万円は控除されて支払われているが、後記のとおり本来磯部が負担すべき所得税等の一部として、原告が磯部名義で申告・納付した分譲地の譲渡益に係る所得税等に包含されているものである。)に右縄延び分の清算金一八八万七〇〇〇円を加えた額一〇二五万七〇〇〇円と認めるのが相当である。代金額が一〇九二万円位であったとする乙第二二号証は、これを裏付ける証拠がないから採用することができず、右認定を覆すに足りる証拠はない。

(2) 税金留保金及び旧地主名義による納税費用分について

原告は、本件土地の分譲に際して、上村及び磯部名義の土地譲渡に係る所得税等の納税申告及び納付を代行し、別表三「所得税率の支払」記載1及び2のとおりの額の支出をした旨主張する。

ところで、右旧地主名義の納税を原告が行ったのは、原告による本件土地取得の契約に際して、税金等は買主が負担する旨約定され、その税金額の一部として、契約額の一部を税金留保金と称して、これを旧地主に支払わず、原告に留保することが行われていたからであると認められるが、さらに二に認定した事実によれば次の事実が認められる。

(a) 本件土地は、上村及び磯部から原告に譲渡され、原告がこれを分譲して分譲一覧表1ないし3記載の買主に対して譲渡したものであるところ、そのような土地や金銭の授受の過程は表には出されず、前記二1のように本件土地は分譲地買主に対して中間省略登記により所有権移転登記がされ、また、各分譲地譲渡の都度、旧地主名義の譲渡に係る所得税申告がされており、同2のとおり、それを執り行っていたのは原告であった。

(b) 本来、本件土地が上村及び磯部から原告に売却された時点で、その譲渡益に基づく所得税等を右上村・磯部が負担し、造成・分譲により、原告が買主から譲渡代金を取得した段階で、原告が改めてその取得した譲渡益に基づく所得税等の納税をすべきであるのはいうまでもない。これをことさらに秘して(a)のような方法が取られたのは、原告が譲渡益を申告した場合、分離課税の土地等の雑所得として、原則として国税四〇パーセント、地方税一二パーセントの税率による課税負担を避けられないところ、上村・磯部らの旧地主名義により分譲地の買主に対して直接譲渡がされたものとして譲渡所得の申告をすれば、長期譲渡所得税としての二〇パーセントの税負担で済ませることができ、かつ、各年毎に一〇〇万円の長期譲渡所得特別控除を受けることができるため、本来の場合よりも格段に軽い税負担で本件土地譲渡に係る課税関係を了することを企図したものと推認することができ、明らかに違法な租税回避行動というべきである。

(c) なお、本来であれば、上村及び磯部は、原告に対して本件土地を譲渡して得た譲渡益につき、これに応じた所得税等を納付すべき義務があるところ、このうち、上村につき一四五万円、磯部につき九三万円は、前記のとおり、税金留保金として当初から原告に保留されて上村・磯部はこの分の支払いを受けていないのであり、本来上村及び磯部が納付すべき税金のうち、右額については、原告が前記別表三「所得税等の支払」のとおりの税金を納付する中に含まれているものと解されるのであり、これは原告が負担したものということはできない。そして、同別表記載の所得税等として支払った額のうち右税金留保金を超える部分は、右(b)のとおり、違法な課税回避をするために支出した費用にほかならず、このような課税回避行為は公序良俗に反するから、資産の取得原価を構成しないことはいうまでもなく、また、譲渡経費にも該当しないというべきである。

以上のとおり、これらはいずれも本件土地取得の費用又は譲渡に係る費用に該当しないことは明らかである。

(3) まとめ

以上によれば、本件土地の取得費は、五〇一一番四の土地について一三〇五万円、同番九の土地について一〇二五万七〇〇〇円の合計二三三〇万七〇〇〇円であり、これを超えては存しないから、これを本件土地の地積合計一九九一平方メートルで除すると、一平方メートル当たりの取得費単価は一万一七〇六円であると認められる。

(二)  造成費用

乙第三五号証及び弁論の全趣旨によれば、原告は、<1>埋土費用として七七万四五〇〇円、<2>地積訂正・測量費用として三〇万円、補強工事費として五七万〇八七五円、合計一六四万五三七五円を地震山下の土地の造成及びこれの関連費として支払ったことが認められる。

ところで、前記認定事実によれば、原告は、宅地造成及び分譲について本件土地のみならず本件隣接地についても、すべて自ら執り行っていたと認められるところ、全証拠によっても、右造成費等が本件土地の造成に限定されていたものと認めるに足りる根拠はなく、結局、隣接地の造成も併せた額であると考えられる。しかし、この事実は、一平方メートル当たりの造成費を引き下げ、所得額を増大させる事実であるから、被告においてこれを主張していない以上、考慮しない。

以上によれば、右造成費等合計一六四万五三七五円を本件土地の地積合計一九九一平方メートルで除した額八二六円をもって、本件土地一平方メートル当たりの造成費単価と認めるのが相当であり、他方、これを超えて造成費が存したことを窺わせる証拠はない。

(三)  支払利子

前記二2(一)(3)(c)に認定のとおり、本件土地を取得するに当たり、原告は、昭和四八年一二月二二日、蒲原町農協から、原告の妻佐野まつみ名義で三〇〇万円、同弟佐野鍬太郎名義で四〇〇万円の合計七〇〇万円を借り入れている。

乙第三七号証の二によれば、原告は、蒲原町農協に対し、同日から昭和五〇年六月までの間に一三三万六一五六円を、また、同年七月から完済(昭和五四年五月一七日)までの間に一四一万二七〇九円を右借入金に係る利息として支払ったことが認められ、また、弁論の全趣旨によれば、原告は、本件土地の一部一六五・九一平方メートルを前記地震山下五〇一一番四七及び四八として昭和五〇年六月に掘久亮に売却していることが認められる。

そこで、昭和四八年一二月二二日から昭和五〇年六月までの間の一平方メートル当たりの借入金利息は、一三三万六一五六円÷一九九一平方メートル=六七一円、また、同年七月から完済までの間の一平方メートル当たりの借入金利息は、一四一万二七〇九円÷(一九九一平方メートル-一六五・九一平方メートル)=七七四円であるから、本件各係争年分に係る一平方メートル当たりの借入金利息は一四四五円であると認められる。

これを超えて本件土地の譲渡に関し支払利子が存したことを窺わせる証拠はない。

(四)  一般経費

乙第三六号証によれば、原告は、昭和五四年中に農地転用申請費用及び測量費として三六万八四五〇円、仲介手数料として二〇万五〇〇〇円を、また、昭和五五年に譲渡した土地に係る農地転用費用及び測量費として七万八〇〇〇円を、さらに、五六年に譲渡した土地に係る農地転用費用及び測量費として三万七五〇〇円並びに印紙代などの雑費として七万五〇〇〇円を各支払ったことが認められ、本件土地の譲渡に関しこれを超えて原告が一般経費を支払ったことを窺わせる証拠はない。

3  係争各年分の本件土地譲渡に係る所得額の算定

右1及び2に検討したところによれば、本件各係争年分の本件土地譲渡に係る原告の所得額は次のとおりと認められる。

(一)  昭和五四年分 一三五二万〇七八七円

(1) 収入金額 二六九六万三二八〇円(分譲一覧表1の譲渡価額合計)

(2) 収入原価の額 一二八六万九〇四三円

次のアないしウの合計額

ア 取得費の額 一〇七七万八〇六五円

分譲一覧表1で譲渡した地積(譲渡地積)九二〇・七三平方メートルに前記一平方メートル当たりの取得費単価一万一七〇六円を乗じた額

イ 宅地造成費の額 七六万〇五二三円

前記譲渡地積に前記一平方メートル当たりの宅地造成費八二六円を乗じた額

ウ 支払利子の額 一三三万〇四五五円

前記譲渡地積に前記本件各係争分に係る一平方メートル当たりの借入金利息一四四五円を乗じた額

(3) 一般経費の額 五七万三四五〇円

前記昭和五四年中に支出した農地転用申請費用及び測量費三六万八四五〇円並びに仲介手数料二〇万五〇〇〇円の合計額

(4) 分離課税の土地等の雑所得金額((1)-(2)-(3)) 一三五二万〇七八七円

(二)  昭和五五年分 九〇二万七六五一円

(1) 収入金額 一七〇〇万円(分譲一覧表2の譲渡価額合計)

(2) 収入原価の額 七八九万四三四九円

次のアないしウの合計額

ア 取得費の額 六六一万一六六六円

本件土地の一平方メートル当たりの取得単価一万一七〇六円に、分譲一覧表2の譲渡地積合計五六四・八一平方メートル(譲渡地積)を乗じた額

イ 宅地造成費の額 四六万六五三三円

本件土地の一平方メートル当たりの宅地造成費八二六円に譲渡地積五六四・八一平方メートルを乗じた額

ウ 支払利子の額 八一万六一五〇円

本件土地の一平方メートル当たりの支払利子の額一四四五円に譲渡地積五六四・八一平方メートルを乗じた額

(3) 一般経費の額 七万八〇〇〇円

原告が昭和五五年に譲渡した土地に係る農地転用費用及び測量費七万八〇〇〇円

(4) 分離課税土地等の雑所得金額((1)-(2)-(3)) 九〇二万七六五一円

(三)  昭和五六年分 三五七万九〇八〇円

(1) 収入金額 六九〇万円(分譲一覧表3の譲渡価額)

(2) 収入原価の額 三二〇万八四二〇円

次のアないしウの合計額である。

ア 取得費の額 二六八万一一二円

本件土地の一平方メートル当たりの取得価額一万一七〇六円に、譲渡地積二二九・五五平方メートルを乗じた額

イ 宅地造成費の額 一八万九六〇八円

本件土地の一平方メートル当たりの宅地造成費八二六円に譲渡地積二二九・五五平方メートルを乗じた額

ウ 支払利子の額 三三万一七〇〇円

本件土地の一平方メートル当たりの支払利子の額一四四五円に譲渡地積二二九・五五平方メートルを乗じた額

(3) 一般経費の額 一一万二五〇〇円

昭和五六年に譲渡した土地に係る農地転用費用及び測量費として三万七五〇〇円並びに印紙代などの雑費として七万五〇〇〇円を支払ったその合計額

(4) 分離課税の土地等の雑所得金額((1)-(2)-(3)) 三五七万九〇八〇円

4  本件各更正処分の適法性

以上に認定した原告の本件係争各年分の分離課税の土地等の雑所得金額は、

昭和五四年分 一三五二万〇七八七円(被告主張一四三九万三六三九円)

昭和五五年分 九〇二万七六五一円(被告主張九五六万三〇九一円)

昭和五六年分 三五七万九〇八〇円(被告主張三七九万六六九三円)

であるところ、被告が本件各更正処分において認定した右雑所得金額が、

昭和五四年分 一一七七万四八六七円

昭和五五年分 八七三万八五五一円

昭和五六年分 二七一万九九四〇円

であることは当事者間に争いがなく、その金額は、いずれも右認定の金額の範囲内にあることは明らかである。また、その余の所得金額は、被告認定額と原告の申告額とがいずれも同一であって争いがない。したがって、本件各更正処分はいずれも適法である。

5  本件各賦課決定処分の根拠及び適法性について

被告は、国税通則法六五条一項の規定に基づき、本件各更正処分によって増加した原告が納付すべき所得税額(同法一一八条三項の規定により一〇〇〇円未満を切り捨てた金額)

昭和五四年分 四六八万八〇〇〇円

昭和五五年分 三一九万円

昭和五六年分 一〇八万七〇〇〇円

につき、それぞれ一〇〇分の五の割合を乗じて算出した過少申告加算税(同法一一九条四項の規定により一〇〇円未満を切り捨て)

昭和五四年分 二三万四四〇〇円

昭和五五年分 一五万九五〇〇円

昭和五六年分 五万四三〇〇円

をそれぞれ賦課決定したものであり、原告が所得金額を過少に申告したことについて同法六五条二項に規定する正当な理由があったとは認められないので、本件各賦課決定はいずれも適法であると認められる。

四  結論

以上のとおり、原告の本訴請求はいずれも理由がないから、これを棄却し、訴訟費用の負担について行訴法七条、民訴法八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 吉原耕平 裁判官 安井省三 裁判官 前田巌)

別表一 本件課税処分等の経緯

一 昭和五四年分

<省略>

二 昭和五五年分

<省略>

三 昭和五六年分

<省略>

別表二 本件土地等の分譲状況一覧表

1 原告の昭和54年分の本件土地譲渡に係る収入一覧表

<省略>

2 原告の昭和55年分の本件土地譲渡に係る収入一覧表

<省略>

3 原告の昭和56年分の本件土地譲渡に係る収入一覧表

<省略>

4 原告主張に係る別表1ないし3記載以外の本件土地等の売却状況

<省略>

別表三 所得税等の支出

1、磯部権吉名義の支払

<省略>

2、上村正雄名義の支払

<省略>

2、石原安太郎名義の支払

<省略>

なお、原告は右以外に代理人として石原安太郎名義で昭和五四年度分の固定資産税金一二万六三八〇円支払った。

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